2022/10/24
, 歯周病, 歯のクリーニング・予防
治療内容
抜歯、歯周治療(スケーリング、スケーリング・ルートプレーニング)、感染根管治療からの補綴治療、楔状欠損に対するコンポジットレジン充填治療期間
7ヶ月治療回数
約15回費用
保険診療:抜歯、歯周治療、根管治療、コンポジットレジン充填治療
患者様は『特に痛みのある箇所はないが、詰め物がずれている気がする。歯科医院を受診するのは30年ぶりなので、悪いところは全て治療したい』とのことでした。
①資料採取、治療方針検討
患者様は歯科医院を受診するのが30年ぶりとのことだったので、まずは現在の口腔内の状態を患者様ご自身にもしっかりと把握していただくため、レントゲン撮影と口腔内写真の撮影を行いました。
全体的に歯石や歯垢の付着がみられ、レントゲン画像では歯槽骨(しそうこつ/歯の根を支えている、土台となる骨)の吸収が確認できました。
場所によっては、歯がほとんど歯槽骨に支えられておらず、かなりグラグラと動揺していました。これが、患者様の主訴である『詰め物がずれている気がする』に該当すると考えられます。
残念ですが、ここまでの骨吸収と動揺がある歯は、抜歯せざるを得ません。
さらに、ブリッジが被せてある歯には、根尖(根の先)に虫歯の病巣も確認できました。こちらは感染根管治療と、それに伴う補綴治療が必要となります。
②スケーリング(歯石除去)/TBI(口腔清掃指導)
今回は歯石、歯垢ともにかなりの付着がみられたので、歯肉縁上(歯の、歯茎から上の部分)のクリーニングを、2回に分けて行うことにしました。
1回目は、患者様ご自身でのセルフケアについてヒアリングを行い、特に目立っていた下の前歯の歯石除去(スケーリング)を簡単に実施しました。
セルフケアについては、「歯磨きは1日2回、サーッと磨く程度で、歯間清掃はやったことがない」とのことでした。歯間清掃はもちろん大切ですが、まずは基本となる歯磨きについて指導を行い、2回目のクリーニングまでに今よりも歯垢の量を減らして、歯肉の改善を図ることにしました。
2回目のクリーニングでは、歯肉縁上の歯石や歯垢を取り除き、歯周組織検査(歯周ポケットの深さ、出血の有無、歯の動揺度などの測定)を実施しました。
健康な歯であれば歯周ポケットは2~3㎜程度ですが、今回、ほとんどの歯に5㎜以上のポケットが確認でき「ました。また、全顎的な出血や歯の動揺から、「中等度から重度の歯周病」と診断しました。
③スケーリング・ルートプレーニング(SRP)・抜歯
歯肉縁上のコントロールができたところで、歯肉縁下(歯の、歯肉から下の部分)のケアに進みます。ここで実施するのが「SRP(スケーリング・ルートプレーニング)」です。
SRPは、歯根表面の汚染・感染したセメント質や歯垢・歯石を、専用の器具で除去しで歯根表面を滑沢にすることで、汚れが溜まりにくい状態にして、歯肉の改善を図る処置です。
今回は全顎的な処置が必要だったので、6ブロックに分けて実施しました。
また、SRPは麻酔を打って行う処置なので、施術部位に抜歯対象の歯があるときは、同時に抜歯も行いました。
【SRPを行うメリット】
1.歯周病の進行抑制と改善
歯石には多くの歯周病菌が棲みついていますが、石灰化して硬くなっているため歯磨きでは取り除くことができません。しかしSRPでしっかり除去すれば、歯周病菌などの細菌数を減らし、歯周病の進行を抑制、結果として歯肉の状態を改善できるのです。
2.口臭の改善
口臭が強くなる要因の1つに、歯石に存在する常在菌から出る毒素の臭いや、歯周病が進行した際に起こる出血や排膿臭などが挙げられます。
細菌が出す毒素には硫化水素やメチルメルカプタンなどがあり、『卵やタマネギが腐ったような臭い』にたとえられます。
根本的な原因である歯石を除去して臭いの元がなくなれば、口臭は徐々に改善していきます。
④仮歯作製・感染根管治療
右上奥歯には根尖(歯の根の先)に虫歯の病巣があったので、もともと入っていたブリッジを外して感染根管治療を行い、同時に仮歯を作成しました。
⑤楔状欠損(くさびじょうけっそん)に対するコンポジットレジン充填
SRPの実施により歯肉の炎症が改善したので、歯の根元の部分的な欠損(楔状欠損)部位に、コンポジットレジン充填を行いました。
こういった治療を実施する際、歯肉に炎症があると治療中に出血し、きれいに詰め物を入れることができません。そういう意味でも、歯周治療(スケーリングやSRP)で歯肉の状態を改善させることはとても大事なのです。
⑥補綴治療
感染根管治療が終了したところで、補綴治療(かぶせ物の治療)に入りました。
患者様の「せっかくならいい歯を入れたい」とのご希望で、ジルコニアブリッジを入れることになりました。(ジルコニアは強度や見た目の美しさに加え、汚れが付きにくい材質です)
⑦再評価
全顎的なSRPが終了したところで、歯肉がどのくらい改善しているか、再度、歯周組織検査を実施しました。
患者様のセルフケアの努力も大きく、歯肉にはかなりの改善が見られ、歯周ポケットの数値は概ね3㎜以下になりました。しかし、もともと歯周病が進行していた奥歯の一部には、まだ5㎜以上の歯周ポケットが存在します。
本来なら、5㎜以上の刺繍ポケットがある歯には、歯周外科処置が必要になります。しかし今回、患者様は血流を良くする薬を服用しており、歯周外科処置を行った際に術野の確保が困難で、止血も難しくなると予想されたため、歯周外科処置は行わないと判断しました。その代わり、短期間ですが歯のメインテナンスのため通院していただき、ケアしていくこととなりました。
患者様はオーラルケアに対する意識がかなり変わったそうで、「ここ(当クリニック)に通い始めた頃の自分の歯は、思い出したくないよ(笑)」とおっしゃっていました。今まで1分もかけていなかった歯磨きに5分以上かけるようになり、洗面所にいる時間が長くなったところ、お子様に『どうしたの!?』と驚かれたそうです。
・予後を完全に保証するものではありません。
・SRPを実施すると、まれに知覚過敏の症状が現れることがあります。また、歯肉の炎症が改善して歯肉が引き締まると、歯が露出する面が多くなり、歯が伸びたように見えることもあります。
<歯周病予防には、セルフケア+定期メンテナンス>
歯周病菌は多くの人が保有しており、口腔内からまったくなくなることはありません。そのため、歯磨きや歯間清掃といった毎日のセルフケアで少しでも汚れを除去することがとても大切です。
しかし、歯と歯茎の隙間など、どうしてもセルフケアでは汚れを取り除けない部分もあります。そこは、歯科医院での歯周治療や定期メインテナンスによるケアが必要です。
定期的に歯科医院に通って歯のクリーニングをすると、虫歯や歯周病の予防になるのはもちろん、症状の発生軽減から、治療費用を抑えることにもつながります。
港南台パーク歯科クリニックでは、担当衛生士が患者様のオーラルケアのお手伝いをさせていただきます。患者様一人ひとりのリスクを調べた上で、虫歯や歯周病などの予防プログラムを組んで進めています。
長年、歯科医院に通っておらず「今さら行きにくい」と感じている方、歯で気になる箇所があるものの、しばらくそのままにしている方は、ぜひ港南台パーク歯科クリニックへご連絡ください。スタッフ一同、心よりお待ちしております。
港南台パーク歯科クリニック
院長 川又 烈志
歯科衛生士 大野
こちらもご参照ください。
港南台パーク歯科クリニック|歯周病治療
港南台パーク歯科クリニック|歯のクリーニング・予防歯科