2022/01/30
, 歯周病
治療内容
歯周病に対する再生療法(エムドゲイン・Bio-Oss)期間
6ヶ月治療回数
10回費用
エムドゲイン55,000円(税込)Bio-Oss 33,000円(税込)
患者様の主訴は「左上の2番目の歯が伸びてきてグラグラする。このままでは抜けてしまうのではないかと心配」というものでした。実際のお口の状態は下記です。
左上2番目の歯が伸びて、少し出っ歯気味になってしまい、グラグラしています。痛みはありませんでしたが、歯茎を指で少し押すと、歯周ポケットから黄白色の膿が出てくる状態でした。レントゲン写真は下記です。
左上2番目の後ろ側の骨がかなり溶けてしまい、深い歯周ポケットを形成していました。
①部分的に骨の吸収がかなり進んでしまっているため、まずは噛み合わせの調整を行いました。噛み合わせがひどい部位は骨の吸収が進む傾向にあるので、噛み合わせの治療は非常に大切です。
②お口の中全体に対して、歯周病の検査とスケーリング(歯石取り)を行いました。全体的に大きな歯周病の進行はありませんでしたが、やはり左上の2番目の歯に関しては、歯周ポケットがかなり深く、重度の歯周病と診断しました。また、歯科衛生士より徹底的なセルフケアの指導を行いました。
③左上2番目の歯周ポケットはかなり深く、麻酔をせずに歯周ポケット内の歯石を取るにはかなりの痛みを伴うため、局所麻酔をした上で歯石取りを行いました。
この治療はスケーリング・ルートプレーニング(SRP)と呼びます。SRPは歯周ポケット内の歯石や汚れを取るだけでなく、歯の根をツルツルにすることで、歯石が再びつきにくい状態にすることも、重要な目的です。
④SRPを行った後も深い歯周ポケットが残存しており、このような状態ではまた歯周ポケットに汚れが溜まり、さらに歯周病が悪化する可能性があります。
今回は患者様と相談して、歯周外科処置を行った上で失った骨を回復させ、歯周ポケットを改善させる治療を行うことにしました。この治療を「歯周組織再生療法」といいます。
今回は「エムドゲイン(※1)」と「Bio-Oss(バイオス/※2)」という歯科材料を使って、再生療法を行いました。処置時間は約60分で、患者様は治療後の腫れや痛みはほとんど感じなかったそうです。
※1:エムドゲイン
1995年に欧州でスタート、日本では1998年に厚生労働省で承認された歯科材料です。ブタから抽出したタンパク質で構成されており、このタンパク質が歯周組織再生に働きかけます。これまで44ヶ国で20年以上にわたり、約200万症例に使用されていますが、エムドゲインが原因の副作用の報告は1例もありません。(基礎文献800本・臨床論文400本・副作用報告0件)
※2:Bio-Oss
ウシ由来の材料で、オーストラリアとニュージーランド産のウシのみを使用しています(いずれもBSEが発症していない国)。また、高熱で焼却処理しているため、蛋白やその他の有機物成分が存在せず、アレルギー反応の可能性は極めて低いです。Bio-Ossは、歯科再生医療において世界中で使用されている天然の骨補填材です。25年間の使用実績や研究で、安全性は実証されています。
歯周外科手術の流れは以下の通りです。
1.局所麻酔(普通の虫歯治療と同様の麻酔です)
↓
2.歯茎を切開・剥離(骨の吸収状態をしっかり目視することが可能となります)
↓
3.汚れの除去(SRPでは取りきれなかった歯石や汚れを徹底的に除去します)
↓
4.エムドゲインの塗布+Bio-Ossを詰める(溶けてしまった骨を回復させる材料を、塗布・充填します)
↓
5.縫合(歯茎をしっかりと縫って処置は終了です)
⑤消毒・抜歯
治療前後のレントゲン写真はこちらです。
治療前後で比較すると、左上2番の歯の後ろ側に、骨が再生されているのが分かります。
現在も定期的に歯のクリーニングに来ていただいており、術後の経過は良好です。歯周ポケットも、歯のグラグラとした揺れも改善し、歯茎からの出血や膿も認められません。
・骨の再生程度には個人差があり、予後を完全に保障するものではありません。
・お体やお口の状態によっては、再生療法が適用できないケースがあります。
(喫煙者は再生療法の適用外です。)
・自由診療での治療となります。
・エムドゲイン、Bio-Ossはブタ・ウシから精製した材料です。安全性は極めて高いですが、これまで報告されていない事象が発生する可能性は否定できません。
20歳以上の日本人の、およそ80%が歯周病に罹患していると言われています。今後、高齢化社会の進行で罹患率はさらに高くなっていくと予想されています。
今回の症例でもそうでしたが、歯周病は痛みがなくとも、少しずつ進行していきます。したがって、気がついたときにはすでに手遅れで、歯を抜かなければならないケースが多々あります。また、一度歯周病になってしまうと治療は難しく、非常に長い治療期間がかかります。そうならないために歯科医院に定期的に通院して、歯周病の検査・クリーニングを行なっていくことが非常に重要です。
また、歯周病は遺伝性の高い病気なので、ご両親や祖父母の方に入れ歯の方がいらっしゃる方は要注意です。
大切なものは失ってから気付くことが多いです。歯を失ったときのことを想像してみてください。毎日美味しく噛んで楽しめていた食事が苦痛に変わってしまうかもしれません…。どんな病気もそうですが、予防に勝る治療はありません!「治療に通う」ではなく、「予防のために通おう」と思っていただけるような歯科医院作りを目指していきます。
スタッフ一同、皆様のご相談・定期検診の受診をお待ちしております。
港南台パーク歯科クリニック院長 川又烈志
こちらも併せてご覧ください。
歯周病治療|港南台の歯医者 港南台パーク歯科クリニック
歯のクリーニング・予防|港南台の歯医者 港南台パーク歯科クリニック