2022/01/22
, 歯科の知識
こんにちは、港南台パーク歯科クリニック歯科衛生士の岡本です。
突然ですが、皆様は動物はお好きでしょうか?
私の実家ではトイプードルを飼っています。
親戚もミニチュアダックスフンドを飼っていたり、友人は猫を飼っている人が多かったりと、身近に犬や猫を飼っている人がたくさんいます。
犬や猫のお世話をするのは大変ですが、一緒に暮らしているとその可愛さに毎日癒されますよね♪
ところで、犬や猫って・・・人間と同じように虫歯や歯周病になると思いますか?
人間は虫歯も歯周病もどちらのリスクもあり、両方に気を付けなければいけません。
犬や猫はどうなのでしょうか。
答えは、『犬や猫は虫歯になりにくいが、歯周病になりやすい』です。
犬や猫も人間と同じ哺乳類なのに、どうしてこのような違いが生まれるのでしょうか?
それは口の中の環境や、虫歯や歯周病の発生のメカニズムに違いがあるからです。
今回はそのような犬や猫との違いを比較しながら、人間の口の中の環境や、虫歯や歯周病の発生のメカニズムについてお話したいと思います。
pHとは酸性かアルカリ性かを数値であらわしたものになります。
通常0から14の値で示されます。
pH7を中性とし、それよりも低いものは酸性、高いものがアルカリ性です。
それでは、人間の唾液のpHはどれくらいでしょうか?
答えは、おおよそpH6.8前後の中性に近い弱酸性です!
犬や猫の場合はどうでしょう?
猫はpH7~8前後、犬はpH8~9前後と言われており、弱アルカリ性です。
実はこのpHは虫歯菌や歯周病菌などの細菌にも、歯そのものにも影響を与えています。
まず、唾液のpHと細菌についてお話します。
虫歯の原因となる細菌と歯周病の原因となる細菌では、その特徴や生態も大きく異なります。
虫歯菌は酸性の環境のほうが活動しやすく、歯周病菌はアルカリ性の環境のほうが活動しやすいのです。
この違いから考えると、人間の唾液が弱酸性であることは、虫歯菌にとって居心地の良い環境であることがわかります。
反対に犬・猫の口の中は弱アルカリ性の為、虫歯菌にとっては住みにくいですが、歯周病菌にとっては居心地の良い環境と言えます。
また、唾液のpHと歯そのものに与える影響についてですが、歯はアルカリ性の環境のほうが石灰化が進むので、歯に付着したプラークが歯石になりやすくなります。
歯石は名前の通り石のように固いので歯ブラシで落とすことが出来ません。
表面がザラザラしているので、上からさらにプラークが付きやすくなり悪循環が生まれます。
歯茎に固い歯石が当たることで絶えず刺激を受けている状態となり、歯茎の炎症も引き起こされ続けます。
つまり、犬・猫の口の中はアルカリ性で歯周病菌に適した環境である上に、歯石がつきやすく歯茎の炎症を引き起こしやすいため、歯周病になりやすいと言えます。
人間と犬・猫の唾液の違いはpHだけではありません。
人間は唾液中にアミラーゼという酵素を持っていますが、犬や猫にはこの酵素がありません。
アミラーゼとは食品を消化しやすくする為の酵素で、でんぷんを糖に分解する働きがあります。
虫歯菌は糖分をエサとして取り込み、自分にとって不要になったものを酸として排出します。
人間が食事をして排泄をするのと同じですね。
ケーキや飴など砂糖の含まれた食品を口にすると虫歯になりやすいというイメージは多くの方が抱いていると思います。
しかし人間はこのアミラーゼという酵素の働きによって、日常の食事の中で摂取しているご飯や芋などの食品も糖分に分解するため直接的に甘い物を食べなくても口の中に糖分が存在してしまい、虫歯菌が糖分を得られやすい環境になっています。
犬や猫はこのアミラーゼを持っていないので、虫歯菌のエサとなる糖分が口の中に存在せず、虫歯になりにくいと考えられます。
勿論、人間が食べている砂糖の入ったお菓子などをあげてしまうと虫歯のリスクが高まってしまうので注意が必要です。
当然ながら、人間と犬・猫では歯の形も違います。
人間の場合、前歯は食べ物を噛みちぎれるように刃物のように薄い形をしており、奥歯は食べ物を磨り潰す為に臼のような形をしています。
ご自身で奥歯の噛み合う面を鏡で見たり、舌でなぞってみたりすると表面がでこぼこしているのがわかると思います。
(もし、歯の表面が平らで溝があまり無いという方は、歯軋りや食いしばりなどの影響で歯の表面が削れていることが考えられます。歯軋りや食いしばりはとても歯に負担がかかっているので注意が必要です。)
犬や猫の場合は、肉食なので肉を引きちぎるのに適した歯の形をしています。
前歯は杭のような形の、いわゆる牙です。
奥歯は横から見ると三角形に近いような形をしていて、ハサミのようにして肉を噛みちぎります。
先程の唾液のpHの部分でも、虫歯菌と歯周病菌の生態の違いを簡単にお話しましたが、ここでもその違いが影響してきます!
まず、虫歯菌と歯周病菌ではそれぞれ棲んでいる場所が異なります。
虫歯菌は主に歯の表面に生息していますが、歯周病菌は酸素が苦手なため、外気に触れないように歯周ポケットの中に生息しています。
虫歯菌にとっては人間の歯の表面でこぼこした溝こそが格好の住処です!
特に深い歯の溝は歯ブラシの毛先も届きにくいので細菌たちの溜まり場となってしまいます。
それに比べて犬・猫の歯の表面には溝が少ないので虫歯菌たちが1ヶ所に溜まりにくく、虫歯になりにくいです。
それでは歯周病菌はどうでしょうか。
歯と歯茎の間には溝があります。それが一般的によく言われる歯周ポケットです。
この中に歯周病菌は生息します。
人間も犬も猫も歯周ポケットは存在しているので、歯周病菌が棲みやすい環境と言えます。
つまり、人間の歯の形は虫歯菌も歯周病菌も棲みやすい形をしているということになります。
ここまで、人間と犬・猫の口の中の違いについてお話をしてきました。
虫歯菌と歯周病菌という細菌たちの生態の違いについても、ご理解頂けたかと思います。
次は虫歯や歯周病がどのようにして発生しているかについてお話をさせてください!
まず、虫歯菌は酸性の環境を好み、歯の表面に住み着きます。糖分をエサにして、その結果酸を放出します。
虫歯菌としても悪気があって酸を放出しているわけではないのですが、その酸によって歯は虫歯になっていきます。
歯周病菌はアルカリ性の環境を好み、酸素が苦手です。歯と歯茎の間に入り込んで生息しています。
歯周病菌にとってのエサはなんでしょうか?
それは鉄とタンパク質です。
歯周病菌がたくさん歯茎の中に存在していると、免疫の力が負けてしまい、歯茎のバリアが崩壊して出血が起こります。
「歯ブラシやフロスを使ったら歯茎から血が出てきた!」と来院される方がいますが、それはまさしく細菌によって歯茎に炎症が引き起こされている状態なのです。
そして、歯茎から出てきた血液の中には鉄とタンパク質が豊富に含まれています。
それらをエサにして歯周病菌は勢力を強めるので、さらに歯茎の状態は悪くなるという悪循環が生まれてしまいます。
「歯磨きすると血が出るので怖くて磨いていない」という方がいらっしゃいますが、ここで歯磨きを行わないと歯周病菌はどんどん増殖していきます。
歯周病菌を減らして歯茎の炎症を抑え、出血を止める為にも、歯磨きはしっかりと行いましょう!
今回は犬や猫との違いを比較しながら、人間の口の中の環境や、虫歯や歯周病の発生のメカニズムについてお話しました。
犬・猫は虫歯になりにくいが歯周病になりやすいです。
それと比べて、我々人間は虫歯も歯周病もどちらのリスクもあり、両方に気を付けなければいけません。
勿論、歯並びや免疫機能の働きによる抵抗性や、生活習慣も大きく関わってくる病気である為、人間でもなりやすい人やなりにくい人など差はあります。
しかし、虫歯菌や歯周病菌は一度でも口の中に棲み着くと、その数を0にすることは出来ません。
一生涯付き合っていかなければならない相手となりますので、全ての人が予防がすることが大切です。
さらに、口の中の細菌が多くなると、血液を伝わって全身に悪影響を及ぼしていることも科学的に証明されています。*1
虫歯菌や歯周病菌などの細菌の数を0には出来ませんが、毎日の歯磨きでその数を減らしていきましょう!
歯科医院で定期的に歯のクリーニングを受けることで、さらに口の中の環境を改善することが出来ます。
ご希望の方は港南台パーク歯科クリニックに、お気軽にご相談ください。
併せてこちらもご覧ください。
*1こちらのページもご参照ください
口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連|e-ヘルスネット|厚生労働省
最後になりますが、当医院は人間専門の医院ですので、犬・猫の歯のクリーニングをご希望の方は専門の機関にご相談くださいませ。